全世界で使われている言語の数は、7千にも上ると言われている。日本語もその中の1つである。日本語の使用者数は約1億2千万であり、中国語や英語には及ばないものの、世界でも上位十番目くらいには位置する大言語であることに間違いはない。しかし、日本語が使用されているのは、日本という狭い地域に限られているため、日本語を母語とする日本人たちは、自分たちの言語が特殊であり、外国語を話す人々が学習するのは困難だと考える傾向にある。事実はこれとは逆なのであり、日本語が示す言語的特徴は、世界の言語の中では、どちらかと言えば多数派に属するものであるし、個々の特徴を考えてみると、比較的単純で規則的な性質をもつ場合が多い。この講義では、日本語がもつこのような特徴を、世界の諸言語がもつ特徴と対比しながら解説していく。