大きなクマのぬいぐるみが見える。ピンクのベッドにドカリと置かれたそれは存在感があった。これを毎日彼女は抱いて寝ているようだ。
「遅くなってすいません。先生のお手伝いをしていました」
「いいよ。先にお邪魔させてもらってたから。それよりも咲良ちゃん偉いね。先生のお手伝いをするなんて」
ノックをしてきたかと思えば宮脇咲良は駆け込むようにして入室してきた。すぐに頭を下げ、謝罪をする。正義が褒めると、彼女は照れたようにはにかんだ。
「もう勉強できる? それとも一休みしてからにする?」
「すぐにやります」
カバンから筆記用具と教科書と参考書、そしてノートを取り出すと、咲良は勉強机に置いた。ピンク色のノートにはかわいらしい文字で自分の名前が書かれている。
「オッケー。じゃあ今日は国語からいこう」
「はい。よろしくお願いします」
咲良が椅子に座るのを見計らって二人は勉強を始めた。隣に座る彼女は甘ったるい匂いがした。
「うん。全問正解。さすが咲良ちゃん、優等生だね」
「そんなことないですよー。先生の教え方が上手なんですよ」
頭のいい咲良は家庭教師が必要とは到底思えなかった。正義としては手のかからない子で、彼女の担当を心から喜んでいる。
「じゃあちょっと休憩しよう」
「飲み物持ってきますね」
「お構いなく」
咲良は正義の言葉を聞く前に部屋から出て行ってしまった。一人になった正義は部屋を改めて見渡した。