殿下の問いかけに、カトリーナ様は眉を下げ悲しそうな表情を見せる。<br><br>その顔は彼女の裏の顔を知らなければ、簡単に騙されそうなほどであった。<br><br>そんな言葉をよく言う⋯⋯。<br><br>ずっと私のことを友人だなんて言っておいて、本当はずっと殿下の婚約者という立場から引きずり降ろそうとしていたくせに。<br><br>思わずテーブルの下で握りしめた拳に力が入ってしまう。<br><br>すると、その力を軽くさせるかのように、温かく優しい大きな手がふわりと乗せられる。<br><br>ハッと殿下へと視線を上げる。<br><br>殿下は私からの視線を受けて、安心感のある柔らかい笑みを浮かべた。<br><br>そして殿下は一つ頷くと、またカトリーナ様の方へと顔を向き直した。<br><br>「心配? よくそんな嘘が言えるな」<br><br>「嘘などでは⋯⋯」<br><br>「噂を流した元凶がよくもそのようなことを言える」<br><br>「まさか!私がそのようなことをするはずがありません⋯⋯」<br><br>「そうか?ではラシェルに聞けば本当かどうか分かるな」<br><br>殿下はにこやかな笑みを浮かべながらも、視線だけは厳しく追及するようにカトリーナ様を見る。<br><br>カトリーナ様は殿下には見えないように、私を一瞬睨み付けると、すぐに殿下へと優雅に微笑み「どうぞ」と伝えた。<br><br>「ですが殿下。 婚約者の欲目などおよしになってくださいね。<br><br>失礼ながらラシェル様が本当のことを言っているのか、私が本当のことを言っているのか... どうか冷静に見極めてください」<br><br>「ラシェルが嘘をつくと?」<br><br>「その可能性もある、と言っているのです。<br><br>もし証言が必要であれば、このウィレミナとユーフェミアにも話を聞いてくださいな」<br><br>カトリーナ様のその言葉に、殿下は「その必要はない」とニヤリと笑った。<br><br>必要がない⋯⋯。<br><br>どういうことだろうか。<br><br>「シリル、先程の会話は保存してあるのだろうな」<br><br>殿下は視線を逸らさずに手を横に出す。<br><br>すると殿下の後ろからサッと現れたシリルが殿下の手の上に録音の魔道具を乗せる。<br><br>いつの間に⋯⋯シリルが。<br><br>全く気配が無かったのに。<br><br>私同様、カトリーナ様たちも驚いたようにシリルを見つめている。 ...
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