最初は偶然だったが、その純白の美しい姿に幼いルードは釘付けになった。以来、時折ちらりと見られるその非日常を期待しながら両親に連れられて教会へ赴くのが密かな楽しみとなったのだった。<br><br>「他人の結婚式なんざ、面白くもなんともないだろ、と」<br><br>レノは呆れたように肩を竦めたが<br><br>「そうでもなかった」<br><br>ルードの生真面目な反応に、揶揄いたい気持ちがむくむくと湧き上がる。<br><br>「ふうん、なるほどねえ。教会通いにかこつけて女目当てだったのか、と。なかなかマセてますね、ルードさん」<br><br>ニヤニヤと面白そうな笑みを浮かべて揶揄すると、ルードは喋りすぎたと思ったのか押し黙った。耳障りな雨音が高い天井に響く。<br>ややあって、ルードは長椅子に足を投げ出したレノの前に立った。細かなガラスが革靴と擦れてざりざりと音を立てる。<br><br>「…技術部門の試作品らしい。なかなかの防衛力だそうだ」<br><br>唐突にそんなことを言いながら、ルードは肘掛部分にカツリと小さなものを置いた。突如職場へと転換された話題に、もはや今日の仕事は終わりとばかりにOFFモードを決め込んでいたレノの頭はついていけず、ぽかんとそれを見遣る。<br><br>「……宝条の奴、頭湧いたのかな、と」<br><br>レノの切れ長の目が捉えたのは鈍色で細身のリング。社員が年齢性別を問わず携行できるようにという配慮か、はたまた単に装飾の必要性を加味しなかっただけなのか、何の装飾もない至ってシンプルなデザインだった。<br><br>「小型で身に付けやすく目立たない防具として考案されたと聞いた。製作コストが高すぎて実用性は薄いらしいが」<br><br>「…そのお高い失敗作を何でお前が」<br><br>「技術側とは少し繋がりがあってな」<br><br>自分の知らない所で裏のやり取りがあったことを言外に匂わせる口調に、レノはおもしろくなさそうな視線でルードを下から見上げた。
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