縫いつけられたように、俺の足はバーの入り口で止まった。<br><br>お嬢さんとの待ち合わせ時間より少し遅れてしまった席。<br>その席にはお嬢さんを取り囲むように神楽と槙の姿が見て取れた。<br>3人は同級生ということもあり、仲が良い。 日頃お嬢さんは、俺に対して、照れたような、緊張したような態度で言葉を発するが、あの2人に対して見せている、くにゃりとした気の抜けた柔らかい笑顔に対して、無償に苛立った。<br><br>「じゃあ、泉の初恋の相手は、幼馴染のお兄さんなんだな。 」<br><br>「うん。 今思えばだけど・・・。 なんだかすごく一緒に遊びたいなって思っていて。 励ましたり、励まされたりしていたかな。 そのころはただ優しくて大好きなお兄さんだったんだけど、今思えばあれ、初恋だったんだろうなって思うよ。 」<br><br>そうしてどこの誰かも解らない男の話をしながら、照れて頬を染めている事実に、胸の中に黒い靄が訪れる。 この訳の分からない感情が、とても気持ち悪いと思いつつ、3人をただ眺めていた。<br><br>「槙君は?」<br><br>「俺は・・・あんまりそういう経験はないな。 」<br><br>「うそ・・・告白とかよくされてそう。 」<br><br>「ああ・・・そういうのは、基本的には断る。 好きでもない人と付き合うのは申し訳ないっていうか・・・泉に会う前の俺はさ、俺と関わると碌なことないって、全員避けていたからな・・・。 」<br><br>槙の視線に何か恋情に近い感情を感じる。 泉に会う前の俺・・・という言葉が、お嬢さんと会ってからは変わったと訴えているように聞こえて、また訳もなく胸がチクりと傷みを走らせる。<br><br>「てか、2人とも初恋とか馬鹿げた話して楽しいわけ?」<br><br>「そういう神楽さんは初恋の相手・
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